お金じゃはかれない

ちょうど2年前、文筆家・小川奈緒さんとイラストレーター・小池髙弘さんのご自宅に伺った。「SIGLASS」という老眼鏡の撮影モデルをお願いしたご縁でお邪魔させてもらったのだけど、その時聞かせてもらった話がずっと自分の中に残っていた。

「お金も大事だけど、お金ではかれない喜びもあるよ」

当時、子どもを持つことについて少し考え始めた頃。でも仕事が好きで好きで、大好きな仕事をしながら子どもと過ごすってどうすればいいんだろう?収入は減るの?とか気になっていろいろ質問していて。一時的に収入が減ることはあるかもしれない、と前置きした上で、この言葉をかけてくれた。

当時は「そういうものなのか」と受け止めつつ、でも達観した方の言葉というか、自分がそう考えられる日は来ないような気がしていた。

今日の夕方。子どもが「あー」とか「うー」とか話すようになったから、膝の上に乗せて「あーうー」とか反応していた時「これだけ幸せならもう大丈夫」とこみ上げるものがあった。まっすぐ私を見て、きゃっきゃ笑う子どもを見て、胸の奥の愛しさゲージが爆発しそうになった。

独立してから自分の頑張りを収入で確認してきた節がある。現代を生きるために、お金はあった方がいい。なくていい、なんて言い切れない、もちろん。

だけどお金では全くはかれない喜びが目の前に生まれた。お金持ちとか誰が優れているとか、そういうこととは無関係にある生命のよろこび。結局いつもこの結論に行き着くんだけど、子どもが生まれてきて、一緒に過ごせて、ただただうれしい。


前田敦子の”月月”
雑誌『あわい』出版