フィットしないピンク

今夏、久しぶりにネイルを楽しんでいる。実は最近まで指先に彩りを添えることへの抵抗があった。

出産後、今思い返すと焦っていた。妊娠で思うように動けなかったこともあり「私を取り戻さないと!」と産後1週間でネイルを塗った。

でも全然フィットしなかった。目の前には乳飲み子と満身創痍の体。そんな自分に鮮やかなピンクはちっとも合わなかった。

だから最近まで透明しか塗らなかった。「母が派手な色をつけるなんて」って心と体が抵抗していた。そんなこと思う必要、全くないのにね。

この間ベビーカーを押していた時、ふと指先のきらめきに気づいた。本当に無意識に塗っていたのだ。夏の海をうすく伸ばしたような涼しい色。抵抗感はすっかり消え去っていた。

きっと産後自分を覆っていた「母はこうあらねば」が少しずつ希薄になっていったんだろう。その意識が完全になくなったわけでもない。ふと表出する「母なんだから」という無言の縛りは、比較的にのびのび子育てをしている私にも容赦なく襲ってくる。社会のせいなのか、自身で科してるのか。

それでも、わたしは私を、取り戻した。