夕日が滲む感覚で、光を捉える

自分が好きな写真って、どんな写真だろう。一つキーワードとして上がってきたのが「湿度」だった。

カラッと明るい写真に憧れる。明るくて誰からも愛される人気者に憧れる。でもどちらかというと私は陰。だから写真も少し影があって、しっとり、じゅわーっとしている方が好き。

今のレンズは高解像度・キリッと描写することに注力しているように思う。それらに私が出したい表現は残念ながら見つからなかった。

懐古主義ではないけれど、少し昔の、もう古いよね、ぼやーっと写るよね、みたいなレンズが圧倒的に合う。その描写はフィルムでしかできないと思い込んでいたけど、デジタルでも工夫すれば、表現できた。だからうれしくっていっぱい書いちゃうね。笑

まつげ越しに夕日が滲むような感覚で、いつも光をとらえている。それはキリッと描写されていなくていいし、ピントが画角全部に合っていなくていい。そういうスタンスは、いわゆる教科書的な写真論とは異なるのかもしれない。でもそれでいい。ようやく感性を信じられるようになった。


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前田敦子の”月月”
雑誌『あわい』創刊