第2話:独立、出産、出産、出産、出産/十場あすかさん

神戸の山あいにある自然豊かな淡河町で、器を作陶している十場あすかさんのインタビューをお届けしています(第一話はこちら)。

幼い頃から、自立への想いが強かったあすかさん。これは合わない、これも合わない、とバツをつけ続けた後、ようやく陶芸に出会えたお話を第一話でご紹介しました。

いよいよ、ここからが陶芸家としてのスタート。

陶芸家として生計を立てるには、窯元に就職するか、弟子入りして独立が一般的。でもあすかさんは卒業後そのまま独立。加えて24歳で第一子を出産、その後10年間は育児で休業。王道からはかけ離れた、自分だけの道を歩んでいきます。

「でもね、当然、最初はどこかで働くことを考えていたんですよ」

当時からお付き合いしていた夫・十場天伸さんと共に、何軒か陶芸家の元を訪ねてみたあすかさん。でも、どこへ行っても弟子入りを断られてしまいます。

「多分、あんたらは使えないって思われたんでしょうね(笑)あと『自分らでやりなさい』とも言われました。1軒目、2軒目と断られて、3軒目でも同じことを言われた頃には『2人でやるしかないか』って。一通り技術は身についてるし、1人じゃ難しくても2人だったら何とかできるかもって」

そうして2007年、あすかさん24歳、天伸さん25歳の時に、ここ淡河町で独立。ようやく陶芸人生がはじまると思ったら…

「実は淡河に来た時点で妊娠してたんです(笑)」

そこから10年は妊娠・出産の繰り返し。一人目の時は、陶芸をする余裕もありましたが、軌道に乗っていない中、何からはじめたらいいのか。子どもがかわいい時期に一緒にいたい気持ちも強く、仕事と育児のはざまで揺らぐ日も。

「だけど、悩む間もなくどんどん生まれるんですよ。気づいたら1歳過ぎたあたりで次の子ができちゃうから、休む暇がない(笑)5年間は、生んで、生んでの繰り返しでした」

その間、ものづくりからまるっきり離れていたわけではありません。むしろ日常はものづくりの宝庫。帽子を編んだり、味噌づくりをしたり。暮らしを前向きに楽しんでいました。でも、だんだんと心の風向きが変わってきます。

「2012年に三男を出産してすぐ『あ、もう働かなきゃ!』っていきなり本能のスイッチが入ったんです。出産直前に、天伸と大喧嘩したのを覚えています。自立しなきゃ!って体の底から突き動かされたんだろうね」

産後、陶芸を再開。まずは天伸さんの雑用から始めましたが、なかなかうまくできません。

「手伝っても二度手間みたいになってしまって。そうこうしてたら4人目の長女ができて、次男が『保育園行きたくない。1人でザリガニで遊んでたい』とか言うから(笑)、園をやめて。陶芸はまた一旦お休み」

子育てに追われ、キャリアが思うように進まない。焦りが募りそうな状況ですが、結果、あすかさんは潔く10年お休みしました。

「やっぱり4人を育てながらで、卒業からのブランクもあって、陶芸に打ち込める環境ではなかったですね。一番下の長女が1歳半になった時、近くに小規模の保育園ができたんです。そこに三男と長女を入れて、ようやく自分の時間ができました」

次回は、10年間の育児を経て再スタートしたあすかさんの作陶のこだわりを紹介します。


十場あすか
陶芸家。1983年広島県生まれ。2007年に夫・十場天神さんとともに神戸・淡河町にて独立。育児で10年休業のち2017年に復帰。白を基調としたおおらかな作風が人気。@asukajuba

七緒
写真と文。1987年神戸市生まれ。上智大学新聞学科卒業後、雑誌編集者を経て2017年独立。ポートレートやライフスタイルを中心に撮影・執筆。@naotadachi