【Work】マーナのある暮らし、コンテンツ制作

生活雑貨メーカー・マーナのコンテンツ制作を担当しました。

「歯ブラシ」という商品を題材に、ショートストーリーを寄稿しています。歯磨きって、意外と日常を見つめ直すいいきっかけだよね、という文脈で物語は進んでいきます。

朝が戻ってきたのは、いつだろう。
てんてこ舞いの9年を経て、
最近の僕の朝時間。

9年ぶりに取り戻した朝時間で、ジュンイチさんは何を想うのでしょうか。写真と文で表現したやわらかな暮らしの世界観をお楽しみください(物語はこちら)。

オンラインストア楽天で商品購入で同梱される冊子にも掲載されています。冊子もめっちゃかわいくてお役立ち内容が詰まってるんですよ〜

マーナの商品はいいもの揃いで、暮らしをすっきり心地よくしてくれる(実は愛用している人も多いはず…)。その魅力をこれからも丁寧に届けていけたらうれしいなと思っています。

”ままならない”への眼差し

こないだ、友人とお茶した時に、ぽろっと口から飛び出した言葉。

「結局、料理家の高山なおみさんだよね」

高山なおみさんが書いた『野菜だより』というレシピ集がある。奥付を見たら出版が2005年。最近買ったけど、令和の今読んでも1mmも色褪せない。何なら、新しく思えるくらいだ。

美しいもの、洗練されたものが好き。一方、それだけじゃ人生進まないよね、という思いがある。光と影、A面とB面、両方が誰にだってあると思う。さじ加減は人それぞれであるにせよ。

高山さんの著書にも、同じ気配を感じる。

たとえば『野菜だより』の奥付には大根の切れ端の写真が載っている。2年前の『自炊。何にしようか』の表紙はラップで包んだ冷凍ご飯。きれいに整えすぎない。その余白に引き込まれる。

だって、みんながみんな、無農薬の野菜を買えるわけでもないし、雑誌で紹介されるような家で暮らしているわけじゃない。私たちの生活は、意外とままならない。


記事コンテンツを作る時、まず「憧れのムードを醸成する」という手法がある。その方が気持ちが高まり、結果的に購買やページビューにつながりやすいから。

でも、憧れだけを並べられると、時折、苦しくなる。自分から遠く離れた存在に思えたり、そのギャップで落ち込んだりしちゃうから。

私が最近大切にしているのは、憧れ+生活感や人間味を織りまぜていくこと。単に憧れだけで引っ張らない。リアルへの眼差しも交えて、心に残っていくコンテンツを作ること。

疲れていても、無理なく摂取できて、読後、前を向ける。そんな写真と文を、この金曜18時のよみものでも、クライアントワークでも淡々と紡いでいきたいなと思う。

誰にでも訪れる、ままならない日々も、愛せるように。写真と文のコンテンツ論。

インボイスで考える、在りたい未来

インボイスの登録が完了した。無事、適格請求書発行事業者になった。

「結局、インボイスってどうする?」

そんなやりとりを昨年頃から聞くようになり、ああ、インボイス。そもそもインボイスって何?と見て見ぬふりをしてきた。

今年の確定申告の時、税理士さんに説明を受けて、ふむふむ。これは今後、自分が、自分の事業がどう在りたいか考えるいい機会だと思えた。

制度の趣旨とは異なるけれど、インボイスとは「これから拡大していくのか、どうなのか」だと捉えている。

個人事業主として細々と生計を立てる道を選ぶなら、申請しなかったと思う。でも写真と文は今後、クリエイティブスタジオとして拡大していく、予定。

それは規模を単純に大きくしたいのではなく、草木がどんどん生い茂っていくように、自然の流れに身を任せながらじわじわ育んでいくイメージ。

私が大切にしている世界観が広く届いていくことで、清々しく生きる人が増えていく。そんな未来を作りたいとちゃんと思っている。

その方向性とインボイス登録事業者になることは、リンクするように思えた。だからほぼ悩まずに、申請した。

今、写真と文としての仕事が、あらたなフェーズへ向かっている。フォトグラファーやライターという立場では携わりきれなかった依頼が増えている。

導かれるまま、誠実に、ていねいに。そういう拡大の仕方も、なかなかいいね。はからずも、面倒でしかなかったインボイスから未来への気づきをもらった。

あ〜〜今週は本当によく働きました!皆さん金曜日、お疲れ様でした◎

全部、発信しなくても、大丈夫。

昔から、お風呂で本を読むのがいい息抜きになっている。

風呂という、家の中でも隔たれた場所で、あたたかい湯に身を任せながら、本の世界に入っていく。いろいろな雑念から切り離されて、目の前だけに没頭できる感じがすごくいいし、時折、面白すぎて1冊まるごと読み終えてしまうことがある。

西加奈子さんの『くもをさがす』が、まさにその1冊だった。

まさか西加奈子さんが乳がんを患っているなんて、思いもよらなかった。西さんの本は何冊も読んでおり、チャーミングな方という印象。私がオードリーの若林さんが好きなこともあり、若林さんと仲の良い西さんに勝手に親近感を抱いていた。

西さんに乳がんが発覚し、カナダで治療するさまを綴るノンフィクション。内容もさることながら、最後の数ページに強烈に惹かれた。長いけれど抜粋して引用します。

最近、インターネットで様々な美しい話を見かける。SNSの発達のおかげだろう。世界中に散らばっていた美しい瞬間に、ワンクリックで立ち会えるようになった。

私はその進化に、心から感謝している。同時に、こうも思うのだ。「こんなに美しい話を、気前よく私たちに分け与えてくれなくていいのに」

それはあなたの、あなただけの美しい瞬間ではないのか。みんなに知ってもらいたい、知ってもらうべきだと思うどこかで、強く「教えたくない」と思っていた。

本当に、本当に、美しい瞬間は、私だけのものにしたい。誰にも教えたくない。私はわたしに起こった美しい瞬間を、私だけのものにして、死にたい。私は、私だけの美しさを孕んで、私は焼かれるのだ。

この文章をお風呂場で読んで「あっ」と思ったのが、息子のことだった。

出産後、息子のことをずっとうまく言語化できなかった。かわいい、大好き。一言で言えばそんな感じなんだけど、一言では語り尽くせない想いがいつも体の中を渦巻いている。

生まれて1年8ヶ月。一生忘れたくない、奇跡のように美しい瞬間は本当にたくさんあった。

でも言葉にしようとすると、大切なものを取りこぼしてしまうような気がして、うまく発信ができない。伝えたいのに伝えきれない。何度も文章を打ち込んではデリートキーを押す。

それは彼自身の人格を大事にしており、まだ判断力が育っていない中、親だけの判断で彼のエピソードを話すことの是非がわからないこともあるけれど、、

西さんの文章を読んで腑に落ちたのだ。

息子が愛しい。その美しい瞬間をすべて共有しなくていい。私と息子のこと、私たち家族のことは、本人がわかっていればいいんだ。

子どものことをどこまで語るのか、語らないのか。顔を載せるのか、名前を公表するのか。家庭によってさまざまで、誰かのお子さんのエピソードをSNS越しに知ると「かわいい…最高」と思うし、線引きは自由だと思う。

基本的には自分がされて嫌なことをしなければ、いいのかなと思う。

でも、心から大切なことまですべて、共有しなくていい。全部、発信しなくても大丈夫。息子との数え切れないほどの美しい瞬間は、心にひっそり刻んでいこう。

1日3回、香りを着替えて

おしゃれに興味が出てきた頃から、香水をふわっと立ち上らせる女性に憧れていた。すれ違いざまにふと気づくあの、感じ。

結婚、出産と次第に香りに心を配る場面も少なくなり、すっかり縁遠い生活を送っていた私が、ここ1年、香りの使い分けにハマっている。面倒くさがりなので手間なく、何より自然由来のもので心地よく。


まずはバームを手作りすることから始めた。「え、手作り?」ってシャッターを下ろさないでほしい(笑)バームって、めっちゃ簡単に手作りできるんです。ミツロウ・シアバター・植物油・精油を湯煎で溶かして完成(こちらを参考に)。慣れれば10分。気分や症状に合わせて、精油をブレンド。

就寝前、首肩をマッサージすると、一日の疲れがすうっと抜けていく。風呂上がりのマッサージとかまるで続かない私が、もう1年以上続けられているのは、シンプルに気持ちよいからだろう。


次は朝、パロサントを焚くようになった。聖木とも呼ばれるそれは、その場を浄化する効果があると言われている。ライターでじゅっと火をつけて、部屋をふわっと一周。スモーキーなのにどこか甘い香り。

朝の部屋は、目を塞ぎたくなる。散らばった積み木、絵本、謎の米粒。一つひとつ拾いあげて、掃除機をかけた後に焚く。正直、浄化とかはよくわからないけど、心が仕事モードに切り替わっていくのは確か。

最後は、ハーブオイルのブレンド。オーガニックに親しい方は超ご存知なナリンのハーブオイル。例にもれず私も33+7を使っていたけれど、たまたま店頭でセンシュアルとカーミングを手首でブレンドしてみた。ほんと、たまたま。

それがうっとりするほどいい香りで。甘いのにキャンディみたいな甘さじゃない。奥深い誇り高き甘さ。なぜか半日くらい香りが持続するので、朝昼とつけて、ふと立ち上る香りを楽しんでいる。


こうやって書くと、昔は他者を意識してつけていた香りが、自分のために変化していったんだと気づく。

35歳。正直、体も肌も曲がり角だ。だからこそ、今の私で楽しめる美しさを、模索するのがとっても楽しい。