3月31日、一冊のノート

3月31日。息子の保育園1年目が終わった。清々しい成長と共に、1冊のノートが手元に残った。所々よれっとなっていたり、カピカピのご飯粒がついてるノートが赤いリボンできゅっと結ばれて。

机に置いてあるのを見た瞬間、ぶわっとこみ上げてくるものがあった。それは毎晩、毎晩、書き続けた連絡帳。

睡眠や食事の生活記録、体調などを書いて持っていき、園でどんな遊びをしたか、どんな様子だったか、先生が書いて戻してくれる。

もともと交換日記が好きなこともあって、連絡帳が楽しくて。家に帰るまで待ちきれなくて信号待ちとかで読んじゃってたし、子育ての悩みを綴ったことも多々あった。

改めて読み返すと、私たちの1年間の子育てがそこにはあった。夏風邪で苦しんだこと、歩けるようになって喜んだこと、おかわりを6回もして驚いたこと。

子どもとの日々はあっという間に過ぎていく。物理的に忙しいのもそうだけど、いつだって今日・目の前にいる子どもが一番かわいくて、それ以前のことはどんどん記憶のすみに追いやられていく。

でも、リボンで結ばれた連絡帳を目にして、忘れてしまうけれど、たしかに0歳児クラスの日常はあったし、そのことを思い出せる手がかりができた、とホッとした。

いつか息子が文字を読めるようになったら、手渡そう。言葉なんかより、この存在が何よりの証だろう。そんな感傷にふけりながら、保育園生活2年目もせっせと連絡帳を書く。

弱さも迷いも、受け止めながら

ライターの一田憲子さんに取材してもらった。
vol.1「何者かになりたい!」という気持ちが人一倍強かった

昨夏、名前と肩書を変えて、ようやく自分とズレがなくなった一方、何ができるか伝わりづらいのと、想いが強いあまり伝えきれないもどかしさを感じていた。

誰かに取材してもらうことで「写真と文・七緒」を浮かび上がらせられれば…。そんなことを考えていた矢先、一田さんが取材し記事にしてくれるというお知らせを目にした。

瞬間、ご連絡した。一田さんは8年前に著書を読んでから、ずっと追いかけている方。暮らしのままならなさも届けてくれる姿に共感しっぱなしで、私が大事にしている影の部分もすくい上げてもらえるのでは、と。

半年間、一田さんに取材してもらった中で、気づいたことがある。それは弱さも個性になるということ。

写真を志してから、基本的に誰かに師事せず仕事してきた。だからか、なめられたくない、第一線で活躍している人に見られたい、肩の力をぎゅんぎゅんに入れながら過ごしてきた。力が入っているからこそ努力できた部分も、多分にある。

でも、本当は強くない。仕事が少ない時期は夫に弱音をこぼすし、大事な撮影前はおなかが痛くなったりする。そんなよわよわを今回ありのまま話してみたら、たくさんの方から共感や応援の声をいただいた。

記事は全3回。最後に書いてくださった言葉が花束のようだった。

これからも、七緒さんは出会った人と自分をリンクさせ、
時に揺れて、時に迷い、自分を変換し続けていくんだろうなあと思います。
そうやって「自分を変える」という力こそが、
七緒さんの才能なんだと思いました。

外の音、内の香

数年前に比べると、自己顕示欲や承認欲求はとんと薄まった。だからといって「もう達観してます。迷いません」ということではない。葛藤を抱えていることはあるし、これからも挫折したり、もがくだろう。

でもそのゆらぎも迷いも表現になっていく、と背中を押してもらった気持ちです。全3回の奮闘記、読んでもらえるとうれしいです。vol.1はこちらから。

料理苦手母の、離乳食奮闘記

先月、1歳半になり、息子の離乳食が完了した。とにかく食べる×食べる×食べる子で、アレルギーもなかったので、スムーズに進んだ方だと思う。

何度かブログでも書いているけれど、出産まで料理をほぼせず生きてきた。こんな風に書くと信念がありそうに感じるけれど、そんなわけもなく(笑)料理上手な母のもとに育ち、料理上手な夫と結婚し、料理ができない自分を見て見ぬ振りし、苦手な気持ちだけをこじらせていた。

さあ、息子のごはん。さすがに作りたい。一瞬、夫に任せようかと思った(料理に関してどこまでも他力本願)、いやいや、やっぱり作る!と決心。離乳食本を買って、不慣れな手先で作りはじめた。

最初は10倍がゆを炊いたり、にんじんを茹でたり、かんたんな工程から。最近はなすとひき肉の炒めものとか、味噌汁とか。離乳食が初期、中期、後期と進むごとに、私の料理経験も培われていった。

ごはんを平らげてくれるのは、なんかこう腹の底から湧き上がってくる喜びがあって、とにかく週末夜、コツコツ作りためた1年(離乳食は5ヶ月頃からスタートするので、完了まで1年)。

「今ではすっかりこんなものも作れるようになりました!」と結べないのがリアルな所で、毎週、毎週、頭を悩ませている。おやつは大体バナナか焼き芋だ。切って出すだけ!

でも、35年抱いていたあの根拠なき劣等感は少しずつ薄れている。好きでも嫌いでもないけれど、息子のために作るのは楽しい。食べてくれたらうれしい。

離乳食が完了したら幼児食。来月からは月1回のお弁当もはじまる。きっと彼が家を出るまで続くごはん作り。マジか…。だけど、私が母の味を今でもおいしいと感じるように、彼の中にも私の味が残るとしたら、それはとても幸せなことだと思う。

時を重ねる働き方

7年前、フリーランスになった理由は色々あるけれど、振り返ると、組織で働くことが向いていなかった。

いいものを作っている自負があっても、上司からダメ出しされた途端に自信をなくす。先輩に企画をごっそり真似された苦い記憶もある(そういうことっていつまでも忘れないですね笑)。あの人はすごいけど自分はだめ、そんな比較も良くしていた。

一人になって、上から何かを言われたり、下の勢いに焦ることがなくなり、心が健やかになった。数年前はアシスタント募集もしていたけどやめた。結局、自分が苦手だった縦の関係性を作りそうだと思ったから。

私の仕事は単発が多い。1日のこともあれば、数ヶ月にわたることもあるけど、撮影して執筆して、仕事が終わったらそこで終わり。その軽さが好き。

でも、最近その先へ踏み出したくなってきた。

人と働くのが苦手だと思っていたのに。今、一緒に仕事している方々がすごく好きで、次の約束ができないことが切ない。人と働くといろいろなことが起きるけれど、いろいろを乗り越えた先に見えてくる表現や仕事があるような気がしている。

ビジネス的な観点でも、ただ撮影するだけじゃなく、チームの一員としてブランディングの根っこから入らせてもらって、どういう見せ方をすればいいか考えた方が結果的に届く表現になると思う。

ゆくゆくは写真と文スタジオ、のような形にもできたら。そんなことを最近考えている。

ふたりの日常

残りわずかな二人だけの時間。
きれいで美しくて涙が出そうになるし
反面、自分にはもう戻ってこない切なさもある

誰だって、毎日、毎日が、そう。

久保陽香さん・金廣真悟さんを撮影させてもらいました。

Thanks to 久保陽香金廣真悟

(4年前、久保さんを初めて撮った写真はこちら