フィットしないピンク

今夏、久しぶりにネイルを楽しんでいる。実は最近まで指先に彩りを添えることへの抵抗があった。

出産後、今思い返すと焦っていた。妊娠で思うように動けなかったこともあり「私を取り戻さないと!」と産後1週間でネイルを塗った。

でも全然フィットしなかった。目の前には乳飲み子と満身創痍の体。そんな自分に鮮やかなピンクはちっとも合わなかった。

だから最近まで透明しか塗らなかった。「母が派手な色をつけるなんて」って心と体が抵抗していた。そんなこと思う必要、全くないのにね。

この間ベビーカーを押していた時、ふと指先のきらめきに気づいた。本当に無意識に塗っていたのだ。夏の海をうすく伸ばしたような涼しい色。抵抗感はすっかり消え去っていた。

きっと産後自分を覆っていた「母はこうあらねば」が少しずつ希薄になっていったんだろう。その意識が完全になくなったわけでもない。ふと表出する「母なんだから」という無言の縛りは、比較的にのびのび子育てをしている私にも容赦なく襲ってくる。社会のせいなのか、自身で科してるのか。

それでも、わたしは私を、取り戻した。

【Work】Shupattoアンブレラ撮影

ベルトがない、とじる傘。Shupattoアンブレラの撮影を担当しました。

とじるだけで生地がまとまるので、ベルトで留める手間なし。手が濡れる、という小さな煩わしさがなくなり、想像以上に快適。私も愛用しています。

プロダクトの美しさを活かしながら、Shupattoアンブレラを持つ軽快さ、上質さが伝わるようにと撮影しました。ロケ場所を提案したりも。

発売前から話題で売り切れ続出。昨日から再販しているのでこちらをチェックしてみてください。

心ひらく夜。月夜の対話室はじめます

月夜の対話室vol.1
ご参加・視聴ありがとうございました。
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最後に、心をひらいたのは、いつでしょうか?

写真と文を生業にする上で、大事にしているのは前段にある「対話」です。

仕事では対話を経てクライアントの課題を紐解き、撮影は対話しながらその人らしい表情を引き出していきます。誰かとお茶する時も、気づいたら深掘りしていることが多くあります。

対話を通じて、相手が自分の内側にある元々あった”解”に出会うことが往々にしてあり、気づきの瞬間は言い表せない喜びがあります。そして相手の気づきはそのまま私自身の気づきにもなります。

今夏、あたらしいプロジェクトを始めます。

「月夜の対話室」

みなさんが最後に心の内側をひらいたのはいつでしょう?忙しくて、せわしなくて、何か(それが”何なのか”も分からなかったりする)に追いかけられる日々。月明かりの下、対話する中で今や自分に目を向ける時間を作れたら…

初回は7月18日(火)21時から。まずは無料でインスタライブで。事前にInstagramのQ&Aで質問を募集し、一つひとつお答えしてゆきます。

抱えていることを聞かせてもらい、質問する人にも、それを見守る人にも、灯火のような時間にできればと思っています。いずれはお繋ぎしてリアルタイムで対話したり、どこかの場を作れたら、とも。

まずは7月18日(火)21時にお会いしましょう〜!気軽に、どなたでも。心をひらいてお待ちしております。

苦手を手放した、ペーパードライバー

自己認識からポンと飛び出してみると、知らなかった自分に出会えることが、まだまだある。

ずっと車の運転が苦手だと思いこんでいた。というか正直に告白すると、運転は誰かにしてもらうもの、私は助手席専門と思っていた。ひゃ〜。

社会人になって必要に駆られて、渋々免許を取得した。でも、免許取得と運転は、必ずしもイコールじゃない。へばりついた苦手意識はなかなか取れず、業務で運転が必要なくなった瞬間、ペーパードライバーになった。

数年前、電車で機材を運ぶしんどさを感じはじめた頃、妹の友人から譲ってもらえることになり、車を所有することになった。はじめは変わらず苦手だった。特に首都高の運転なんて、恐怖以外の何者でもなかった。

だけど乗りはじめて3年。最近ようやく慣れてきて、良き相棒だと思えるようになった。

運転はたのしい。晴れた海沿いの一本道を走るのも、ラジオをのんびり聴きながら渋滞にはまるのもたのしい。時折誰かと乗って、とりとめのない話をするのもたのしい。少しintimacyな空気になるのもすき。

運転中は目の前に集中せざるを得ない。もわもわまとりついていた思考はどんどん後ろに流れていく。頭の中がすっとクリアになっていく。

くすみブルーのかわいい車。先日ついに10万kmを超えた。苦手と思いこんでいても、挑戦してみたら、案外仲良くなれるんだ。35歳になっても、どんどんあたらしく。

ソファの位置、変えただけで

実は今春、引っ越しを検討していた。

今のマンションは住み心地がよくお気に入り。公園が目の前にあり、賃貸では珍しく断熱、ゆとりある玄関まわりなど、清澄白河でこの好条件はなかなかない、と思う。

でも、2〜3年で引っ越したくなる。飽き性なんです。清澄白河の中でも転々としており、今の家は3つ目(笑)

そんなこんなで、何軒か内見に行ったけど、結局、ピンと来る場所が見つからなかった。数年後、東京から離れることも決まっており、まあ、タイミングは今じゃない、と。

今週、月曜日。初夏のように爽やかで過ごしやすい陽気だった。

ふと、仕事の合間にソファの位置を変えてみた。リビングの窓を背に置いていたソファを、90度回転してみた。部屋が明るくなって、風がふわふわと通るようになった。

ついでに放置していた枯れ植物を手入れし、最近お迎えしたアロマディフューザーで精油を焚いた。ユーカリのすっきりした香りが、部屋全体に広がっていく。

その時、強烈に思ったのだ。「今はこの家を、愛そう」と。

おしゃれなリノベーションでもないし、趣あるヴィンテージでもない。築20年のふつうのマンションだ。だけど、今、この家を愛することが、連綿と続くありふれた日常を持ち上げてくれる。

ソファの位置を90度変えただけ。幸せはいつだって、この手の中にあるんだね。