日本仕事百貨「文章で生きるゼミ」に参加しています。

7月から、リトルトーキョーで開かれている日本仕事百貨「文章で生きるゼミ」に参加しています。わたしが今、フォトグラファーでありながら文章を書くことも生業にしているのは、ひとえに新卒で入社した出版社で鍛えられたおかげですが、それは先輩や上司、執筆者に磨いてもらったスキルであって、体系的に書き方を学んだわけではありませんでした。

「書くこと」。特に「インタビュー記事を書くこと」は今後ずっと続けていきたい事柄の一つです。そこで、このあたりで改めて理論や書き方を学んでおこうとゼミに申込んだのでした。

最初の課題は「好きな食べものについてインタビューをする」たった10分間、事前準備なしでゼミ生にインタビュー。それをテープ起こしして文章化する、という内容でしたが、個人的にとても好きな文章になったので、こちらでもご紹介させてください(なお、インタビュー相手に掲載許可を取っています)。


【誰かのために あなたのために 作る餃子】

衣食住はわたしたちが生活する上で、もっと言えば生きる上で避けては通れない基本中の基本です。今日何を着ていこう、何を食べよう、どこに住もう、そんな日々の選択にその人の個性があらわれるように思います。

今回は「食べる」にスポットをあてます。あなたは何を食べることが好きなの、どうやって食べるのが好きなの、そんな問いかけから見える「自分らしさ」を紐解きました。

「仕事で疲れている時は必ず餃子を食べたくなります。たくさん作ってたらふく食べるのが幸せ」

朗らかな笑顔で話してくれたのは、現在会社員として働いている鈴木みどりさん。鈴木さんの好きな食べものは? そう問いかけたところ、すぐさま「餃子!」という答えが返ってきました。

なぜ、鈴木さんはそれほどまでに餃子を好きなのでしょうか。餃子を好きになったきっかけについて聞いてみました。

「実は学生時代は餃子を意識したことはありませんでした。就職して数年経ったある日「餃子を食べたくて仕方がない!」と、突然餃子を欲しはじめ、気づいた時にはもう好きになっていました。今は、餃子にご飯とビールがあればしあわせです」

餃子は中に入れる具材にもバリエーションがあります。ここにも鈴木さんのこだわりを見つけました。

「パワーをつけるために、にんにくは必ず入れますね。逆に変わったものは一切入れません。具材はお肉とニラとキャベツがベース。シンプルが好きです。作る時は「相手においしいって思ってもらえるかな?」ということを考えて作っています。それは例えば、家族や友だち、そして旦那さん」

作り方のこだわりを語ったあと、鈴木さんはおもむろに口を開きました。

「一人で作って一人で食べると、結局疲れが抜けず、悶々としてしまいます。だから、餃子は、誰かのために作って、餃子を囲んでわいわい食べたいんです。餃子を食べるみんなの笑顔を見ていると、疲れが吹き飛んで、また明日から頑張ろうって思えます」

餃子を好きな人は世の中にたくさんいるでしょう。でも「誰かのために」という文脈の中で語られる餃子はなかなか、ありません。

鈴木さんのらしさ。それは「あなたのために」という想い。好きのほんの少し先にある「喜んでほしい」という気持ちはとても鈴木さんらしく、わたしたちも今日から取り入れられる生きるコツだと感じました。


たった10分、事前準備なしでどんな文章が書けるのか…。ドキドキしていたけれど、伝えたい想いを見つけて、余計なものを削ぎ落として、磨いていけば良い文章になるのかもしれない、という発見がありました(この文章が良い文章か、というのはさておき)。

インタビューを受けて下さった方にも、喜んでもらえて一安心。この文章を書きながら、目の前の相手や取材先の皆さんに喜んでほしくて文章を書いているのかもしれないと、気づきました。そして、もしかすると文章は時に人を感動させられるものかもしれない、と可能性を感じています。

相手の気持ちをすくい取って、言葉にして、伝える。奥が深すぎて、くらくらしちゃうけれど、実直に文章に向き合っていきたいな、と思う今日この頃。