【インタビュー前編】オズマガジン編集部 井上大烈さん+滝瀬美穂さん「コンセプトと特集」

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2017年6月に創刊30周年を迎えた女性情報誌「オズマガジン」。最近は雑誌の枠を飛び出して、ウェブサイト「よりみちじかん」、お散歩のおともにぴったりの「よりみちノート」、イベント「よりみちブックウォーク」など、「いい1日」の輪をゆっくりと広げています。

わたしがオズマガジンと出会ったのはちょうど10年前、大学生の頃。社会人となりフォトグラファー/ライターとして独立したわたしはポートフォリオの持ち込みなどで編集部のみなさんとお話する機会があり、真摯でていねいな雑誌作りをする姿勢を目にしました。

大好きなオズマガジンという雑誌。大好きな編集部のみなさん。その作り手の想いをもっと読者に伝える機会があれば良いのに…という想いが実り2017年11月17日、オズマガジン編集部のみなさんをお招きしてエディターズトークというトークイベントを開催しました。その様子を今日から前・中・後編の3回に分けて綴ります。

登壇してくださったのはオズマガジン編集部・副編集長の井上大烈さん、デスクの滝瀬美穂さん。ゆったりページをめくるようにご覧ください。


合言葉は「いい1日を」

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忠地 オズマガジンは2017年6月に創刊30周年を迎えました。そもそもどのようなきっかけで創刊されたのでしょうか?

井上 オズマガジンは1987年にリゾート施設に置くレジャー情報誌として創刊しました。1989年に書店に並ぶ月刊誌となり、2016年7月号にカバーモデルや内容を一新。「いい1日を」をという合言葉のもと、雑誌を作っています。

オズマガジンは町やお店を紹介している情報誌ですが、コンセプトは「よりみち案内帖」。読者のみなさんによりみちをしていただき「今日はいい1日だった」と思ってもらえるよう心がけて作っています。会社帰りや休日によりみちしようという物理的な意味はもちろん、そこに含まれる「心のよりみち」を意識しています。

忠地 心のよりみち、というとどのようなイメージでしょうか?

井上 きっと読者のみなさんは忙しい毎日を過ごしていると思うんです。だからオズマガジンをきっかけに少し息抜きができる時間を過ごしてもらいたくて。訪れたことのない町に足を運んだり、ずっと気になっていた喫茶店で珈琲を飲んだり…。その結果「今日はいい1日を過ごせた」と思ってもらえたらうれしいです。

忠地 合言葉「いい1日を」は編集部のみなさんで考えたのですか?

井上 いや、僕が勝手に考えました(笑)

以前、鎌倉のケーキ屋「pompon cakes」を取材した時、お店の方がお客様にケーキを手渡すとき「どうぞいい1日を」と言っていたんです。

それがすごく良いなぁ…と。「いい1日を」と実際に口にするのは気恥ずかしさもあるけれど、ほんの少しだれかを思いやる気持ちにぐっと来ました。それが原体験となり、のちにオズマガジンの合言葉を決める際、候補として編集長や編集部員に相談したら、あっさり「いい言葉だね!これにしよう」と決まりました。

 

旬・定番・広告が特集の肝

忠地 まずは雑誌オズマガジンの作り方について話をお聞ききしたいです。

井上 オズマガジンは編集長1名、副編集長の僕を含めた編集部員5名とアシスタント1名の合計7人で作っています。編集部員が企画を考え、取材などの手配を行ういわば実働部隊。副編集長の僕が内容や流れを確認するディレクター的な役割。編集長は誌面の最終チェックを行います。

忠地 毎月の特集はどのように決めていくのでしょうか?

井上 雑誌発行の3ヶ月前に特集を決める企画会議を行います。編集部員それぞれがリサーチを重ね「読者にいい1日を過ごしてもらえる企画はこれだ〜!」という熱い思いをプレゼンし、「新しい東京・日本橋」「週末ひとり旅」といったメインの特集を決めていきます。

忠地 特集はどのような基準で決めていきますか?一つの町を取り上げることもあれば、アートやおやつなどのテーマ毎に取り上げることもあり、さまざまですよね。

井上 特集の考え方は3つあります。

一つ目は今、純粋に面白いと思うもの。たとえば、来年2月に発売予定の「楽しい文房具」特集は、文具の世界が最近どんどん広がっているという事象に着目し「今の時代、この小さな遊び心が必要だ」という想いで制作しています。

二つ目は鎌倉、銀座特集などの定番特集。定番はたくさんの読者に手にとってもらえますし、オズマガジンらしさとも言えます。

三つ目は、広告を意識した特集。雑誌は広告収入が鍵となるビジネスモデルでもあるので…。たとえば2017年12月号の「新しい東京・日本橋」特集はどちらかと言うと広告を意識した特集です。

忠地 なるほど。その3つの切り口が混ざりあっているのですね。

 

なるべく現場に足を運ぶ

忠地 メインの特集が決まったあとは、どのような流れで雑誌発行まで進んでいきますか?

井上 特集が決まったら、ありとあらゆる方法で情報をかき集めます。町に足を運んだり、詳しい人に話を伺ったり、雑誌や書籍・WEBなども見ます。

それぞれで得た情報をかけ合わせながら「何をどんな切り口で取り上げるとオズマガジンらしいか」という観点でお店・スポットを取捨選択し、誌面の具体的な内容を絞っていきます。

忠地 やっぱり直接、町やお店に足を運んでいるのですね。

滝瀬 そうですね。なるべく事前にロケハンに行くか、取材時にフォトグラファーさんやライターさんに同行するようにしています。たとえば2017年11月号「週末ひとり旅」特集の町を決める企画会議で、わたしが新潟を提案したところ「新潟ってひとり旅するイメージがわかないな〜」と言われてしまいまして。「じゃあ新潟でロケハンしてきます」と言って、その週末に一人で旅立ちました(笑)

忠地 週末に足を運んだんですか!すごい行動力です。

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滝瀬 一日中、自転車で汗だくになって新潟をめぐった結果、古い町並みが残っていたり、素敵なお店があったり、散策しがいのある町だということが実感できました。翌週出社して「新潟、楽しかったです」と魅力をみんなにプレゼンしたら、無事、誌面で取り上げることになりました。うれしかったですね。

井上 特集と具体的な内容が決まったら、誌面での見せ方を考えていきます。写真を大きく載せるのか、インタビュー記事としてまとめて紹介するのかなど。見せ方が決まったらフォトグラファーさんやライターさんと一緒に1〜2週間かけて取材を実施。原稿の執筆、誌面レイアウトの決定などを経て一冊の雑誌になっていきます。

(書き手:忠地七緒 撮影:木村直登)


中編は「編集すること」について。こちらからご覧ください。