【インタビュー後編】オズマガジン編集部 井上大烈さん+滝瀬美穂さん「これからのオズマガジン」

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2017年11月17日、オズマガジン編集部のみなさんをお招きして開催したイベント・エディターズトークの様子を・後編の3回に分けてお届けしています。本記事は後編。「これからのオズマガジン」についてお話を伺いました。


あなたのポケットによりみちを

忠地 2017年6月12日、OZmagazineの創刊30周年の記念日にオズマガジン公式ウェブサイト「よりみちじかん」がはじまりました。

井上 今まで30年間、雑誌でよりみちのきっかけとなる情報を届けてきました。でもオズマガジンが考える価値観を広げていくのに、雑誌だけでは物足りないと思いはじめたんです。ウェブサイトは毎日気軽に見られますし「ポケットによりみちを」みたいなイメージで作っています。

忠地 雑誌だと編集部のみなさんの人となりが表に出ることはあまりありませんが「よりみちじかん」では、雑誌を作る上で感じたことや好きなことについて話されていて、楽しく読んでいます。

井上 よりみちじかんをはじめた理由は2つあります。ひとつは「よりみち」という言葉にリアルさを感じてもらいたかったこと。「よりみち」の定義自体が曖昧なので僕たちが実際によりみちをして、その様子を「よりみちじかん」で綴ることで、読者に「じゃあわたしはこんなよりみちしてみよう」というきっかけになれたらいいなと。

あと、僕たちは今までお店や人を取材し、その物語を雑誌で届けてきました。「物語を届ける」という切り口を編集部に置き換えたとき、僕たちがどういう想いを込めてオズマガジンを作っているか伝えても良いんじゃないかと思ったんです。

結構長い文章を書いたりしているんですけれど、その感じも良いかなと思って。「よりみちじかん」は模索しながらじんわり作り上げています。

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雑誌の魅力とは

忠地 最近、雑誌の休刊が相次ぎ、紙媒体からウェブサイトに移行する流れもあります。オズマガジンのみなさんが雑誌というメディアにこだわる理由はありますか?

井上 もしかすると、雑誌じゃないとできないことはもう少ないのかもしれません。お店の情報はウェブサイトで検索できますし…。でも一つ言えるとしたら雑誌には「はじまりとおわりがある」所が良いと思っています。

忠地 はじまりとおわり…。素敵な言葉ですね。

井上 インターネットは際限なく情報を追っていけますよね。でも雑誌にはページ数という制約があるので、情報を選ばないといけない。1冊におさめる、編集するという制約の上で生まれる情報の価値こそが紙媒体の魅力だと感じています。

 

「いい1日」を広げていく

忠地 最後にこれからオズマガジンが挑戦していきたいことを聞かせてください。

井上 「いい1日を」の輪を広げていきたいです。一見きれいごとなんですけど、いい1日が増えたらいい毎日になるし、いい毎日が増えたらいい町ができると思います。スピードの早い時代ですけど、よりみちという価値観を通して、もう少し気楽に生きるお手伝いをできたら良いなと。

具体的に、雑誌はもちろんのこと、イベント開催、ウェブサイト「よりみちじかん」やSNSでの発信、よりみちノートの新たな展開など、引き続きみなさんに楽しんでいただける企画を考えています。

滝瀬 井上と同じ気持ちです。オズマガジンは人生を変えることはできないかもしれないけれど、みなさんがいい1日を過ごすお手伝いはできると思っています。それをずっと続けていきたいですし、もっとその価値観を知ってもらいたいです。

忠地 井上さん、滝瀬さん、ありがとうございます。本日のエディターズトークには古川編集長にもお越しいただいています。もし宜しければ、最後に古川編集長にこれからのオズマガジンのことを伺いたいです。

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古川 はじめまして。オズマガジン編集長の古川です。実は、井上や滝瀬の想いと全く同じなんです。僕は10年間、編集長としてオズマガジンに携わってきて、ずっとみなさんの「いい1日を」作ろうと思って雑誌を制作してきました。でも、今までその想いを体現する言葉がなかったんです。

2016年7月号のリニューアルを機に「いい1日を」という言葉を井上が作り、言葉ができた瞬間、オズマガジン編集部が一つの旗のもとにまとまりました。人って、言葉があると想いを誰かと共有しやすいですよね。言語化されると価値になるんです。そういう意味で、僕たちは30年雑誌を作ってきましたが、実はまだ始まったばかりです。

いい1日が増えれば町が良くなるし、世界が良くなるし、もしかしたら戦争が減るかもしれない。そこまでの力を「いい1日を」という言葉は持っていると思います。言葉は作った本人が一番浸透させられます。だから井上と滝瀬を中心に、編集部員が「いい1日を」という言葉を大切にして、今後もオズマガジンを作っていってほしいと思います。

忠地 情報の裏には必ずだれかの想いがあります。お店を営む人の想い、町を盛り上げようとする人の想い。想いがまとまると物語になります。オズマガジンは情報誌ですが、物語も届けてくれるからこそ、わたしたち読者にあたたかく伝わり、それがわたしたちの「いい1日を」作るきっかけになっているのだと感じます。井上さん、滝瀬さん、そして古川さん、本当にありがとうございました。

※2017年12月、副編集長の井上大烈さんは編集長に、編集長の古川誠さんは統括編集長に就任されましたが、イベント当時の肩書でご紹介いたしました。

(書き手:忠地七緒 撮影:木村直登)