女の子の撮影中、時に深い話をすることがあります。「なぜモデルになったの?」「将来は何をしたいの?」答えを聞くと、驚くほどよく考えていて、先を見据えていて、真面目で情熱があって。見た目のかわいさとのギャップに驚かされることが本当によくあります。
「かわいい女の子」だけではない。一人ひとりが個性的でとっても面白いんです。そんな女の子の本質をもっと多くの方に伝えたくて、インタビュー企画を始めました。きっと写真だけを見るときより、何倍も何十倍もその女の子のことが知れるはず。そして文章を読んだ後、写真を見返すと、また写真の見方も変わってくるはずです。
今までの道のりを 本当の気持ちを 言葉と写真で紡ぐ
新感覚インタビュー「Girl’s REAL 」
vol.1 森田 亜沙美(モデル)
コンプレックスをすべて活かせる仕事を見つけた
ーーまず、森田さんがモデルになったきっかけを教えてもらえますか?
森田 昔からモデルになりたかったわけではなく、小さい頃の夢は声優か漫画家でした。高校卒業後、デザイン専門学校への入学を機に上京。原宿をぷらぷら歩いていると、美容師さんに声をかけられることがすごく多くて。その時、自分のコンプレックスを全て褒められたんです。背の高さも、顔の小ささも、手足の大きさも。「私のコンプレックスってモデルという仕事に活かせるんだ」と気づき、サロンモデルを始めました。
ーー森田さんが言うコンプレックスって普通女の子がうらやましい所じゃないですか…?(笑)
森田 たしかに…。でも私にとってはコンプレックスだったんです。中学生の頃、腰パンスタイルが似合わなくて悩んだりして…。今考えると、手足が長いからゆるっとした感じが合わなかっただけなんですけど。
ーーなるほど。サロンモデルを経て事務所に所属したのはなぜでしょうか?
森田 モデルを始めた時点で、いつか事務所に入ろうと決めていました。だから目標を二つ設定しました。まず一つ目が雑誌『FRUiTS』のスナップ隊に声をかけられること。当時はスナップされたくて毎日のように原宿に繰り出していました。
ーーなるほど!それはすごい行動力です。
森田 気合を入れて、目立つ服装をして(笑)でもはじめは全然声をかけてもらえなくて…。スナップって派手な人ではなくて、本当に好きな服を着ている人が選ばれるんですよね。そう気づいてからは、私も気取らず自分の好きな服を着ていくようにして、スナップしてもらうことが多くなりました。
森田 二つ目の目標が1年間で30冊雑誌に掲載されること。ある日、掲載誌を数えたんです。「1、2、3…あ、30冊出てる。じゃあ事務所に入ろう」と。知り合いの美容師さんに相談したところ事務所を紹介してくれて。専門学校卒業直前の19歳の冬、モデル事務所に入りました。
ーーもともとモデル志望ではなかった女の子が18歳の春に上京して、19歳の冬に事務所に入る…。なんだか勢いにドキドキします。未来への不安はなかったですか?
森田 不安…。そうですね…。事務所に入るまではトントン拍子で進んだので不安はなかったです。社長さんが所属モデル一人ひとりの将来を考えてくれて。「私を東京のお母さんと思って、何でも言ってね」って親身になってくれて。この事務所だったらずっと頑張れるって思っていました。
でも、やっぱりそう簡単にはいかなくて。
ーーというのは…?
森田 駆け出しの頃、挑戦したいファッション誌やCMの仕事をなかなかつかめなかったんです。「私はどこがダメなんだろう」って悩み込んでしまいました。1年くらい経った時「このままじゃ次のステップに進めない」と思って、最初の事務所を辞めて。HPを見て「入りたい」と直感で思った今の事務所に連絡をして、23歳の頃から所属しはじめました。
自分を繕いたくない。どんな場所でも似合うのがモデル。
ーー今回、私が森田さんを撮影するのは初めてでした。そもそも写真を撮ってもらうことは楽しいですか?
森田 楽しいです。写真を撮ってもらうと自分の成長を客観的に見られるのが面白いんです。18歳の時と今を比べると全然違いますし。どこが変わったのか、なりたい人物になっているのか、など分析できるから好きです。できれば1ヶ月に1回撮って自分の経過を見ていきたいくらい(笑)
ーーなるほど。今回の撮影中はどんなことを考えていましたか?
森田 「ありのままの森田さんを撮影したい」とだけ言われていたので、普段の素のまま楽しんじゃいました(笑)あ、ただ一瞬だけバレリーナをイメージしたんです!最初にマンションの屋上で撮った時は、あのだだっ広さと空気感にバレエが似合う感じがして。
ーーそうだったんですね!ちなみにいつも撮影中はあまりイメージしないですか?それとも考えていくタイプですか?
森田 テーマによるんですけど、一番多いのは「今日の私は夏帆さんだ」「今日は宮崎あおいさんだ」みたいにギアを入れていきます。宮崎あおいさんはこういう表情しそうだな〜など考えながら撮られています。人だけじゃなく、海やお花畑など自然を想像したりすることもあります。
でも最近Instagramを見ていると、モデルさんってイメージ云々ではなくて、すごく計算して撮影しているな〜って思うんですよ。
ーー計算している、というと?
森田 例えばフォトジェニックな場所にわざわざ出かけて撮影したり、おしゃれな壁を探して撮ったり。私はそういうのはいらないんです。自分が写っていればいいじゃんって。
森田 前の事務所の社長に「モデルはどんなメイクでも衣装でも場所でも、自分をきれいに見せられる力が必要」って教わってから、今でもその言葉が心に残っています。どこにいても決まるのがモデルの仕事。だからインスタ映えなんて狙わなくていいって常々思っています。時代の流れには逆行していますけど(笑)
ーーすごく分かります。過剰なインスタ映えは写真の本質から逸れていると私も思います。ちなみに森田さんはファッションブランドのモデルもするし、CMにも出るし、仕事の幅が広いですよね。今の自分の肩書は何だと思いますか?
森田 肩書としてはモデルですね。でも自分の中ではモデルでもないし役者でもないし、なんとなく中間地点にいる感じがしています。モデルさんってキラキラしていて、オシャレな顔立ちで、性格もこれぞモデル!みたいな。モデルである自分を演出している方も多くて。
でも私はそういう計算が出来ないし、自分を繕えないし、不器用でモデルらしくない。あと、冨永愛さんのようなTHEモデル道を突き進むというよりは、ローラさんや水原希子さんのようにモデル+タレント、モデル+役者みたいな得意分野をかけ合わせて仕事したいと思っています。一つの肩書にこだわることなく、幅を広げたいです。
自分から動くし、失敗しても見返せばいい!
ーー今まで一番楽しかった仕事を教えてください。
森田 うーん…。悩みますね…。悩むっていうことは「これが一番!」みたいな仕事がまだないんでしょうね。反対に悔しいことは多いです。絶対演じたかったドラマのオーディションに友だちが受かっていたりとか…。私、いつも一歩、足りない。一歩足りない自分が悔しい。
森田 でも「遅咲きだから大丈夫」って自分に言い聞かせています。きっとブレイクするという変な自信は昔からあって。
ーー変な自信は大切です!では、これからやってみたいことはありますか?
森田 ファッションショーだったら東京ガールズコレクション。ドラマだったらNHKの朝の連続テレビ小説。映画・舞台だったら戦争かコメディものがやりたいです。今はモデルや役者という仕事をしていますが、最終的には声優やナレーターになりたいです。
ーーものすごく明確に答えが返ってきました(笑)色々と経験した上で、最終的には声を使ったお仕事をしたいんですね。
森田 そうなんです。声優学校に21歳から3年間通っていたこともあって、声を評価してもらえることが多くて。モデルとしての見た目と強みである声を掛け合わせて仕事をしたいです。モデルを経て声優になった久保ユリカさんを目指しています。
ーー話を聞いていると森田さんは自分で考え、未来に向けて行動していますよね。見た目はお洒落でカッコ良いのに、いい意味でガツガツしているというか…。
森田 いや〜自分から動かないとダメだなって思っているんです。ただ存在しているだけじゃ誰も見つけてくれないし、失敗しても見返してやろうって思っています(笑)私、自分を動物にたとえると、アフリカにいる小動物だと思っていて。
ーーアフリカにいる小動物…?そのたとえすごく面白いです(笑)
森田 アフリカのサバンナって、小さな動物から大きな動物までいるじゃないですか。ライオンとか強い動物の中でミーアキャットみたいな私がちっちゃくジャブして、どんどん成長していくみたいな感じで(笑)多分、私、戦いたいんでしょうね。表面上はそこまで見せませんが、狩りに行くみたいなテンションを持っていつも仕事しています(笑)
自分がやりたいことも目標地点も明確に見えています。だからあとは色んなことを経験して、キャリアを積み重ねていきたいです!
(hair & make:塚本 麻貴/photo & interview & text:忠地 七緒 )