”フィルムに寄せる”は新しい表現

前回の記事で、自分の撮影スタイルを見直しているという話を書いた。今日は具体的な内容を。

写真をはじめた当初からずっとフィルムカメラが好き。撮り直せない一回性、あわいを感じる表現、色あい、質感、フォルム…理由を挙げるとキリがない。作品は基本的に全てフィルムで撮っている。

でもここ1〜2年フィルムが高騰し、品薄がデフォルト。残念ながらフィルム市場は縮小傾向にある。そんな悲しい現実を今まで見て見ぬ振りしていたのだけど、時間もあるし、今後どうしていくかをちゃんと考えてみた。

結論としては、どうしてもフィルムで撮っていきたいもの…たとえば前田敦子の”月月”はフィルムで撮る。そうじゃないものはデジタルで撮ってフィルムに寄せていくことも考える。


つい最近までデジタルをフィルムに寄せていくなんて、正直かっこ悪いと思っていた。嘘じゃんって思ってた。ただ、表現を模索していくと「え、めっちゃ可能性ある!楽しい」。

レンズを選べばフィルムのようなファジーな写りを再現できる。レタッチを細かく詰めていけば、フィルムの色合い・質感に近づけることはできる(詰める作業も結構楽しい)。フィルムをデジタルで再現することは「嘘」じゃなくて、新しい表現だ。

デジタルだったら暗い場所でも撮れるし、何枚でも撮れるし、現像に出さないからこそ、色をほぼすべて自分でコントロールできる。

フィルムの縮小を嘆くだけじゃなく、デジタルカメラでどう撮れば伝えたい世界観を届けられるのか、思考をスイッチしてみたら、確実に新しい世界が広がりつつある。

私は今、写真をはじめた時と同じくらい、ワクワクしている。


前田敦子の”月月”
雑誌『あわい』創刊