苦手を手放した、ペーパードライバー

自己認識からポンと飛び出してみると、知らなかった自分に出会えることが、まだまだある。

ずっと車の運転が苦手だと思いこんでいた。というか正直に告白すると、運転は誰かにしてもらうもの、私は助手席専門と思っていた。ひゃ〜。

社会人になって必要に駆られて、渋々免許を取得した。でも、免許取得と運転は、必ずしもイコールじゃない。へばりついた苦手意識はなかなか取れず、業務で運転が必要なくなった瞬間、ペーパードライバーになった。

数年前、電車で機材を運ぶしんどさを感じはじめた頃、妹の友人から譲ってもらえることになり、車を所有することになった。はじめは変わらず苦手だった。特に首都高の運転なんて、恐怖以外の何者でもなかった。

だけど乗りはじめて3年。最近ようやく慣れてきて、良き相棒だと思えるようになった。

運転はたのしい。晴れた海沿いの一本道を走るのも、ラジオをのんびり聴きながら渋滞にはまるのもたのしい。時折誰かと乗って、とりとめのない話をするのもたのしい。少しintimacyな空気になるのもすき。

運転中は目の前に集中せざるを得ない。もわもわまとりついていた思考はどんどん後ろに流れていく。頭の中がすっとクリアになっていく。

くすみブルーのかわいい車。先日ついに10万kmを超えた。苦手と思いこんでいても、挑戦してみたら、案外仲良くなれるんだ。35歳になっても、どんどんあたらしく。

ソファの位置、変えただけで

実は今春、引っ越しを検討していた。

今のマンションは住み心地がよくお気に入り。公園が目の前にあり、賃貸では珍しく断熱、ゆとりある玄関まわりなど、清澄白河でこの好条件はなかなかない、と思う。

でも、2〜3年で引っ越したくなる。飽き性なんです。清澄白河の中でも転々としており、今の家は3つ目(笑)

そんなこんなで、何軒か内見に行ったけど、結局、ピンと来る場所が見つからなかった。数年後、東京から離れることも決まっており、まあ、タイミングは今じゃない、と。

今週、月曜日。初夏のように爽やかで過ごしやすい陽気だった。

ふと、仕事の合間にソファの位置を変えてみた。リビングの窓を背に置いていたソファを、90度回転してみた。部屋が明るくなって、風がふわふわと通るようになった。

ついでに放置していた枯れ植物を手入れし、最近お迎えしたアロマディフューザーで精油を焚いた。ユーカリのすっきりした香りが、部屋全体に広がっていく。

その時、強烈に思ったのだ。「今はこの家を、愛そう」と。

おしゃれなリノベーションでもないし、趣あるヴィンテージでもない。築20年のふつうのマンションだ。だけど、今、この家を愛することが、連綿と続くありふれた日常を持ち上げてくれる。

ソファの位置を90度変えただけ。幸せはいつだって、この手の中にあるんだね。

日常に、風を通す

どうにも行きづまってしまった時、場所を変えるだけでクリアになる。

先週、息子が体調を崩し、病院をいくつか巡った。子どもを病院に連れて行くのが苦手だ。ネット予約して、なだめながら待合室で待って、先生の話を聞いて、不明点があれば質問して、薬局に薬を取りに行って。

ちゃんとやらなきゃ、ちゃんと、ちゃんと…という想いから、家に帰るとぐったりしてしまう。

帰ったら帰ったで、家=仕事場でもあり、モニターを見ると、仕事のあれこれが頭によぎる。調子のいいときは「家で仕事できるんなんて最高、家も表現の一つよ」なんて思っているけれど、切り替えができない時も。

そんな時は、なかば強制的に居場所を変える。交通費がかかっても、行き帰りに時間がかかっても。いつもの場所から離れるだけで、思考がすっきり研ぎ澄まされていく。

昨年春、仕事がじぇんじぇんなかった頃はよく葉山に一人ドライブへ行っていた。清澄白河の自宅から葉山まで、1時間半。

首都高に乗ってしまえば、まっすぐな一本道。音楽もかけずに、ひたすら走る。お台場のビル郡、川崎の工場地帯、横浜ベイブリッジ、山、そして海、と景色が変わっていく。

海に到着したら、靴を脱いで砂をわしわし踏みしめる。しばしぼんやり佇んで、おいしいご飯を食べて帰る。

「色々あるけど、まあ、いっか」

こないだは次に住む町を弾丸で訪れた。山と海にかこまれた美しい町。

やったことは保育園見学とランチを食べたことくらい。あ、ずっとつけたいと思っていたジュエリーブランドがたまたまお店を出していて、透明のピアスをお迎えした。

往復2時間、滞在たった3時間。時間のコスパは決して良くないけれど、強烈な気分転換になった。

行きづまりを感じる時は大体マインドも落ち込んでいるから、外に出ることも億劫だ。それでも、えいやっと飛び出してみる。新しい風を、自発的に自分の体に取り込んでみる。小さな何かが変わっていく。

2023年もまもなく前半戦が終了。みなさんは、どんな風を取り込みたいですか?

【Work】アンジュルム・松本わかなさん撮影

アンジュルムの松本わかなさん、撮影しました。夕暮れの光と透明感が、儚くて美しくて。15歳の一瞬を切り取らせてもらいました。

ハロー!プロジェクトの全アーティスト大好きで、毎日楽曲や動画を摂取していますが、中でもアンジュルムはいつだって背中を押してくれる。『愛・魔性』も『悔しいわ』も何十回MVを見たことか。

竹内朱莉さんが築き上げた今のアンジュルムは最高にハッピー。見ているだけで元気になる。来週の卒業コンサートも観に行きますよ〜!ライブビューイングだけれど!

アイドルという特別な時を過ごす、彼女たちだからこそ放つ光。決して消費せずに、丁寧に残していくお仕事をしていけたらうれしいな。

苦しさをひらいていく

苦しさをさらっと伝えることが苦手だ。渦中にいる時、誰かに分かち合うことで、心が軽くなるってわかっているけれど。思考が邪魔をして、結局自分の中でぐるぐる膨らんでいく。

思い出すのは妊娠中のこと。

私は妊娠期間の心身の揺らぎが結構あった。つわりが、とか、お腹が重くて、とか、そういうシンプルな不調もあるけれど、あの8ヶ月間はずっともやに包まれていた感覚だった。

自分の体なのに、何者かに乗っ取られているような…。だけど、周りからは「幸せな人」として見てもらえる。そのギャップを一つひとつ紐解く余裕もなく、幸せなふりをして辛さを隠す自分がいた。

だって、辛い部分を見せると、仕事を依頼されづらくなると思ったから。

その感覚は今も残っていて、たとえば子どもの体調不良はできるだけ隠してきた。もちろん苦労を表に出す必要もない一方で、何もなかったかのように振る舞うのが、だんだん息苦しくなってきた。

だって大変なんだもん(笑)辛そうな姿を見るのも辛いし、うつったら自分も辛いし、夫との仕事の調整なんて毎回、戦。いろんなレイヤーの辛さが重なるから、マジ、ヘビー。

最近、その苦しさを少しずつひらいていってもいいのかもと思っている。ひらいたからって何か大きく変わるわけじゃないけれど…。仕事を頼みづらくなる感じが出るのも怖いのだけれど…。

でも、もし、誰かが困っていたら手をさしのべたいと思うし、自身の苦しさを少しひらける社会になれば、生きやすくなると思う。

子育てだけじゃない。介護、失恋、心身の不調…大なり小なり、誰しも苦しさを抱えて生きている。

その苦しさを打ち明けられるような、分かち合えるような、そんな人でありたいし、そんな場を作れたら、とぼんやりと。