陶芸家・十場あすかさんの人生観を全4回にわたって、聞かせていただいています(第1話はこちら)。
今回で最終話。
さあ、そろそろお昼ごはんの支度が整いました。今日は夫で陶芸家の十場天伸さんお手製の水餃子。部屋の中にいい香りが漂ってきました。高校入学を控える長男のお兄ちゃんも一緒に食卓を囲みます。
子育て10年、再開して6年。これまでを振り返って「ぎゅうぎゅうでした。もう、めっちゃダッシュしてた」と笑うあすかさん。
「去年、福岡で展示した時、オーナーさんに『こんなわーっとした忙しない仕事のやり方、どうなんかなあって思う』って相談したら『今はわーっとする時期なんじゃない?』って言われて。そっか、わーっとしないと見えないものあるもんねって、腑に落ちました」
もともと自立が人生のテーマだったあすかさん。その気持ちは変わらずあるのでしょうか。
「今はね、自立したいとも思ってない。あの気持ち、どこ行ったんやろう?(笑)」
「去年くらいに、もう陶芸でやっていけるって思えたんです。それが大きいかな。再開してそりゃ1〜2年はできないんですよ。技術は身についているけど、ブランクがあるから乗りきれなくて。毎日毎日積み重ねて、理想に近くなってきてる。完全一致しているかっていうと、まだちょっとあれやけど…でも、だいぶ近づいている」
今後、どんなことに挑戦していきたいですか?と伺うと…
「目標が全然ないんです。天伸は最初、学校で自己紹介した時も『世界で活躍したいです』って言い切って、みんな『おおー!』ってどよめいて(笑)私はとにかく目の前のことを一生懸命やる、以上。みたいな感じかなあ。ふふふ」
自身に合わないものを削ぎ落として、たどり着いたものづくりの道。10年の休業を経て、見つけた自身の世界観。
「今でも、昔のちゃんとしなきゃ精神の延長で、きっちり作りたい気持ちはあるんですよ。でもやっぱりできないんです。できないことを、昔は『なんでだろう、うーん』って思ってたけど」
今は、そのできない自分も…
「まあ、えっかって感じ(笑)まあ、えっかって」
お話を伺いはじめて1時間半。むっちりとした水餃子が、あすかさんの器にどんと盛られ、食卓へ。やわらかな湯気とじゅわっとした香りで心の温度が一気に上がります。さあ、ハフハフしながらみんなでいただきます。この続きは、また今度。
十場あすか
陶芸家。1983年広島県生まれ。2007年に夫・十場天神さんとともに神戸・淡河町にて独立。育児で10年休業のち2017年に復帰。白を基調としたおおらかな作風が人気。@asukajuba
七緒
写真と文。1987年神戸市生まれ。上智大学新聞学科卒業後、雑誌編集者を経て2017年独立。ポートレートやライフスタイルを中心に撮影・執筆。@naotadachi